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もしもの時の希望を言葉にする。35枚のカードが家族との会話の入り口になるまで

病気や人生の最終段階について、家族とどう話せばいいのか。一般社団法人iACPが発行する「もしバナゲーム」は、35枚の言葉が書かれたカードを選ぶ手続きを通じて、重い話題を切り出す摩擦を和らげようとしています。

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もしバナゲームのカードと外箱
もしバナゲームのカードと外箱出典: 一般社団法人iACP

重い話題を切り出すきっかけをどう作るか

家族や大切な人と、将来病気になったときや人生の最期について話しておきたいと思っても、日常の食卓で唐突に切り出すのは簡単ではありません。縁起でもないと感じられたり、何を切り口にすればよいか分からなかったりと、会話が始まる前にためらいが生じがちです。

35の言葉から選んで手放す仕組み

一般社団法人iACPが翻訳・出版しているもしバナゲームは、米国のCoda Allianceが開発した「Go Wish」を原版とするカードゲームです。1セット36枚のうち35枚には、重病のときや死の間際に人が大事なこととしてよく口にする言葉が記されています。

もしバナゲームのカードと外箱
もしバナゲームのカードと外箱出典: 一般社団法人iACP

人数に合わせて選べる会話の進め方

公式ページでは、1人でも複数人でも使えるように複数のルールが案内されています。10枚を選び理由を考える「ソリティア」や、意思決定の代理人と2人で行う「ペアーズ」、さらに4人1組で進める「ヨシダルール」などがあります。ヨシダルールの公式文書では、手元の5枚から特に大切な3枚を選び、なぜそのカードを残したのかという思考過程を一人ずつ言葉にしていきます。

ゼロから話す負担をカードが引き受ける

ゼロから「最期はどうしたい?」と尋ねるのではなく、「場にある言葉を選び、手放す」という物理的な動作を挟むことで、話す側の心理的な摩擦を軽減する設計です。運営者は、ゲームを通じて友人や家族に願いを伝えて理解してもらうきっかけになり、いざというときの判断がしやすくなると説明しています。

机に並べたもしバナゲームのカード
机に並べたもしバナゲームのカード出典: 一般社団法人iACP

研究から見える対話の難しさと現実

ただし、カードがあれば誰もが家族とすぐに話せるわけではありません。三重大学の研究者らが2018年に保健医療福祉職91名を対象に行った研究では、90分のワークショップ直後に家族や大切な人と話し合いたいと答えた人は42名で、全体の46.2%にとどまりました。関心の高い専門職であっても半数以上は話し合いたいと回答しておらず、研究者らも実際にその後の話し合いが行われたかまでは追跡できていないことを限界として挙げています。

人生の最期や将来の医療といった話題は、気持ちの準備が整わないまま言葉にしようとすると身構えてしまいます。もしバナゲームが示しているのは、答えそのものを急いで引き出すのではなく、「すでに用意された選択肢から選ぶ」「手放した理由を語る」という手順を挟むことで、対話の開始点を手元に引き寄せるアプローチです。これは介護や医療の場に限らず、普段の1on1や家族会議でも応用できる視点です。自由な発言を促す前に、まずは具体的な言葉が書かれたカードや付箋を手元に配り、「なぜこれを選んだか」から順番に聞いてみる。道具とルールを介在させることで、唐突な問いかけに伴う摩擦を小さくできるかもしれません。

KamoTalkの視点

ここから先は出典の事実ではなく、KamoTalkによる分析です。

Permission話しかけてもいいと感じられる仕組み
『縁起でもない』と避けがちな話題を、『ゲームをする』という枠で持ち出せるようにしている(運営者の説明)。話題を出す口実をカードが肩代わりする構造だが、相手が乗ってくるかは確認事実ではない。
Match誰と話すかを決める仕組み
ペアーズは『意思決定の代理人』と行うことを推奨しており、誰と話すべきかを具体的に示している。ソリティアやヨシダルールは相手を限定しない。
Reasonその人と話す理由を与える仕組み
『いざというときに備えて希望を知っておく』という今話す理由を運営者が明示している。ただし実際にいつ家族で使われているかのデータはない。
Prompt最初の一言・話題を与える仕組み
最も強い軸。35枚の具体的な言葉から選び、『なぜその10枚(3枚)なのか』『重要でないカードはなぜか』を説明するという、最初の一言の型がルールに組み込まれている。
Place会話しやすい物理・デジタル環境
時間・場所の指定は弱い。ソリティアの説明に『時間を作って話し合ってください』とある程度。論文では90分WS・4人1組という場の設計が使われたが、家庭での場づくりは示されていない。
Next会話後の関係につなげる仕組み
公式は選択理由を後で家族や友人に説明することを勧めるが、話し合い後の継続や記録の仕組みはsource上確認できない。論文でも実際に話し合ったかは追跡されていない。

出典

  1. iACP | もしバナゲーム(新しいタブで開きます) — 一般社団法人iACP一次情報2026年9月28日 閲覧
  2. iACP | 法人概要(新しいタブで開きます) — 一般社団法人iACP一次情報2026年9月28日 閲覧
  3. iACP | iACPについて(新しいタブで開きます) — 一般社団法人iACP一次情報2026年9月28日 閲覧
  4. 【ご注意ください】「もしバナゲーム」の著作権について(新しいタブで開きます) — 一般社団法人iACP一次情報2026年9月28日 閲覧
  5. レクリエーションルール(ヨシダルール)(新しいタブで開きます) — 一般社団法人iACP一次情報2026年9月28日 閲覧
  6. 保健医療福祉職を対象としたAdvance Care Planning(ACP)を促すワークショップの評価(新しいタブで開きます) — 日本緩和医療学会(Palliative Care Research 16巻2号 p.215-224, 著者: 辻川真弓ほか 三重大学)2026年9月28日 閲覧